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加工物語

急激な業績下降で揺らぐ「屋台骨」――「高品質追求」を捨てたニコン

 

 

 デジタル一眼レフカメラ分野で、世界市場を牽引し続けてきたニコンが今、大きな曲がり角を迎えている。大衆向け廉価版モデルとして発売した「D600」で撮った画像に黒い粒子が写る不具合が発生、米国で集団訴訟を起こされたほか、中国では尖閣諸島をめぐる国家間対立もあって販売停止に追い込まれたのは記憶に新しいところだ。加えて、ここにきて表面化しているのが、デジタル一眼レフカメラの九割以上を生産する製造拠点タイ工場のラオス分散に伴う「ドタバタ劇」だ。繰り返される販売見通しの下方修正、相次ぐ下請け会社とのトラブルなど、「モノづくり」企業ニコンの屋台骨が今、大きく揺らぎ始めている。

ラオス進出という「苦肉の策」
「事前に何らの相談もなかった。ただ、ついてこいと言われたって、あんな内陸部では、そもそも部材を作るための原材料の調達さえ困難だ。労働力の確保、従業員の福利厚生、駐在員の生活まで考えるととても採算に見合わない」
 昨年十月、ラオス中部サバナケット県にオープンしたニコン・ラオス工場をめぐり、進出を「強要された」とする日系下請け会社の役員は憎々しげにこう話す。
 別の部品会社担当者も、「ラオス進出に応じなければ、タイでの取引中止を匂わせる発言をされた」と不快感を隠さない。結局、この部品会社は、「通関費用だってこちら持ち。これ以上の過度な負担に耐え切れず、断った」(同)というが、いつ取引が中断されるか怯える毎日だという。このように、タイで部品を納入してきた日系下請け企業からはニコンのラオス進出は極めて評判が良くない。
「タイ・プラス・ワン」―。近年、外国企業の集積で慢性的な労働力不足に陥っているタイで語られ始めた言葉だ。労働集約型の工程の一部を周辺の隣接発展途上諸国に分散し、半製品を再びタイに持ち込んで完成品とし、海外に出荷する生産形態を指す。昨今のチャイナリスクもあって、こうした工場の分散設置の動きに乗り遅れまいとする日系企業が後を絶たない。タイを拠点にラオス進出を決めたニコンもこうした一社だが、同社の場合、分散化に至った真の理由はそれだけではなかった。
 ニコンがラオス進出を決めたきっかけの一つに、二〇一一年のタイ大洪水があった。洪水により中部アユタヤ県のデジタル一眼レフカメラの基幹工場は水没、業績は大きく落ち込んだ。ここに、一三年から世界的に顕著となったデジタル一眼レフカメラ市場の低迷が追い打ちをかけた。カメラ映像機器工業会の統計によれば、デジタルカメラ市場を牽引してきた一眼レフが、一三年の世界総出荷台数で前年比一五%減(一千七百十三万台)と振るわず、発売以来初となる前年割れとなった。今年になっても状況は変わっていない。市場の変化は、一眼レフカメラの生産を事業の柱に据えてきたニコンを直撃した。今年二月には一四年三月期として三回目となる業績の下方修正を発表。販売計画台数は期初の会見で掲げた七百十万台から六百万台へ大幅に引き下げた。
 こうした事態を受け、ニコンが緊急に採った中長期戦略が、先進国、新興国それぞれに合わせた価格帯に製品ラインナップを分散、多様化させる「新規販売戦略」だった。これまで、自社製品の「高品質」を前面に押し出し、世界共通仕様の一眼レフカメラを投入し続けてきた同社としては、戦略の大転換である。
 だが、それは地域や用途ごとに品揃えをいたずらに増やすことで、コストのかかる精密部品などの管理や調達、生産を複雑にする。金型も増え、サプライチェーン傘下の下請け会社に過度の負担を強いることにもつながる。何よりもかさむ製造原価が問題であり、結果、それを無理にでも切り詰めざるを得ない。こうした流れで出てきた「苦肉の策」がラオス進出だった。ラオスとタイの賃金格差は賞与や福利厚生も含めれば実に四倍以上。さぞ魅力的に映ったに違いない。